日本人は「たくさん英語を勉強しているのに英語ができない」って本当?

前記事でも触れましたが、「日本人は英語を読めるが会話はできない」、という決まり文句があります。

「日本人は英語にたくさんの時間やお金をかけている、それなのに英語ができない」、といういい方もよく聞きます。

日本人は英語に時間やお金をかけている割には、英語の能力国際比較などでは順位が下の方である、というのです。

 

でもそれって本当でしょうか。

 

日本人の英語学習時間をアメリカの外国語学習時間と比べてみる

 

文科省によると、2015年2月現在、日本の公立中学校3年間の英語授業時間数は年間105時間、3年間合計で315時間が確保されています。週に3回ぐらいです。

この時間数は中学の一時間50分授業の時間数です。本来の一日24時間に基づいた時間数では年間約88時間、3年間合計で262.5時間です。

「年間88時間」

外国語という今まで使ったことのない言語の学習時間として、多いでしょうか?

例えば、ということでいつも比較に出されるアメリカ。アメリカと比較してどうでしょうか。

 

アメリカでも、実は中学以上、特に高校では、外国語教育が必修になっているところが多いです。

アメリカの高校は日本の中学3年生から始まって4年間で卒業するのが一般的ですが、高校卒業や大学入学の際にも、外国語を2年から3年履修していることが必要になります。

アメリカには日本のように国全体での統一基準がありませんが、色々な州で、外国語教育は、普通の授業形式で、年間150時間と規定されているところが多いようです。

 

普通の授業形式とは、その外国語に流暢な教師一人に対して生徒が20名前後の教室での授業ということです。

アメリカではオンラインでも外国語の授業が取れるところが多いですが、そのように先生と一対一の授業の場合は年間135時間だそうです。

アメリカは夏休みが6月ぐらいから8月ぐらいまでのところが多いですから、この授業時間をこなすためには、外国語の時間は基本的に授業のある日毎日、となります。

 

これは一般的なアメリカ人が高校という義務教育を終えるためにも必要とされているごく普通の授業時間数です。

そして、我々もなんとなく知っている通り、アメリカ人の外国語能力は高いとはいえません。

それでもアメリカ人は英語ができますので、ごく一般の人はこの程度でも問題がないわけです。

 

日本の英語授業時間数は、外国語ができなくてもたいして困らないアメリカ人が、初めて普通の公立学校で必修となる外国語の授業時間数より、はるかに少ないといえます。

 

いや、日本は中学だけでなく、高校でも英語を学び続ける。合計したら大学入学前の外国語授業時間数はアメリカよりはるかに多くなるのでは?という意見もあるかもしれません。

日本では高校は義務教育ではないので、学校によって違うと思いますし、英語の授業も細分化しているようですが、大体3年間で600時間以上を英語に使っているようです。

アメリカでは、高校で2,3年、外国語を学ぶ生徒が一般的ですので、それだと中高を合わせた外国語の授業時間数は日本の方が当然多くなります。

バイリンガル教育(イマージョン・スクール)はアメリカで増加中

 

では、外国語なんてあんまりできなくても困らないわ、というフツーのアメリカ人ではなく、教育熱心で、子どもは外国語に堪能なバイリンガルに育てたい、という親は、アメリカではどうするのか。

もちろん、私立の学校で、外国語教育を奨励しているところもありますが、公立学校ではどうでしょうか。

アメリカでは公立学校にもチャーターだの、マグネットだの、色々な学校のシステムがあるのですが、そのような少し特色を出した公立学校の中に、イマージョンというバイリンガル教育を行う学校が増えています。

こちらのニュースで、2007年にはイマージョンの学校は全米で250校程度だったが、2011年にはその倍以上の530校ぐらいに増加したと伝えられています。

イマージョンはもともと家庭で話していない言語を学校の授業言語として、低学年から導入するというバイリンガル教育方法の一つです。

英語と外国語のイマージョンでは、その英語と外国語の授業言語に用いられる比率を、日本の年長にあたるキンダーガーデンで英語10%、外国語90%、一年生では英語20%、外国語80%というように学年が進むにつれて外国語の方を減らしていき、高学年では英語50%、外国語50%にして問題がないようになることを目標としています。

しかし、このようなイマージョンでさえ、家でその外国語を話さない場合にはマスターできるとは限らない、という意見もあります。

 

つまり、それだけ言語の習得とは時間がかかるものなのです。

英語に限らず、語学の勉強に一番必要なものとは時間ではないでしょうか。

 

ほんの少し外国語学習の開始年齢を下げても、大した効果は到底期待できません。

ほんの少し英会話教室に通っても、すぐに効果は出ません。

 

早期英語教育が注目されるもう一つの理由がここにあります。

時間のかかる外国語の学習効率を上げることができ、かつ外国語学習のための時間を多くとることができる、ということなのです。

 

 

まとめ

長くなったので記事の内容をまとめます。

 

  • 英語に限らず言語の習得には時間がかかる。
  • それなのに、日本の英語授業時間数は、外国語がそれほど必要でもないアメリカの生徒に必要とされている外国語授業時間数よりも、スタートダッシュ時点での時間が少ない。
  • アメリカでは、外国語教育に熱心な家庭は、イマージョンというバイリンガル教育を行う公立学校に入学させるという選択肢もあり、そのような学校は増加している。それでも、それだけでは外国語が習得できない可能性があるとさえ言われている。
  • つまり、日本人が学校で英語を学んでいる時間はむしろ少ない、ということです。

 

 

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