幼少期から英語を学ぶ利点について、以前記事を書きました。そこで、その利点は、発音に苦労しないことだと書きました。ただし、発音というのは、外国語学習にはかなり重要なのに、日本ではそれがずっとそれほど重視されずにここまできているようだ、とも書きました。
 
でも、実は、最近の心理学や脳科学の研究で、外国語を学ぶことやバイリンガルであること自体に利点があるという結果が報告されてきていました。

 

外国語を学ぶことは脳によい 

 

日本でもあちこちで紹介されたと思いますが、例えば、バイリンガルは遂行機能とか実行制御と呼ばれる脳力 (executive control) に優れている、という研究結果が発表されています。

脳の前頭葉というところがいわゆる人間らしい行動をつかさどる部分であるということはかなり知られてきていると思います。

遂行機能というのはその前頭葉で、人間の意識ある行動を制御する機能の一つです。

物事を達成するために段取りを考えたりしながら、そのために邪魔になることを排除していく脳力です。

 
その他にも、色々とバイリンガルの脳が優れているという研究結果は数多いです。
 
ただ、このような結果が続々報告されているとはいえ、その一つ一つは「一研究結果」に過ぎません。

 

 

バイリンガルの脳力の高さの研究結果には「出版バイアス」?

 

また、これについては「出版バイアス」があるかもしれないという意見があるのです。
 
「出版バイアス」とは、研究成果を発表する学術誌が、好ましい結果を出している研究報告の方を多く出版してしまう傾向を指します。
 
バイリンガルが優れた遂行機能を持つなどという研究結果が多くなった昨今、これに疑問をもったある研究者が、この出版バイアスについて調べました。
 
どうやったかというと、査読のある学術誌に発表されている、バイリンガルの認知能力に関する研究報告数と、学会で発表されている同じテーマに関する研究報告数を詳細に比較したのです。
 
学会で発表される研究成果は、途中経過報告の意味もあります。そこで、両者を比べれば、出版バイアスがあるかどうかの一つの指標になると考えたわけです。
 
彼女の研究結果は、ズバリ、出版バイアスがある、というものでした。
 

学会ではバイリンガルの脳力が優れているという研究結果と、そうでもないという研究結果の報告はほぼ半々だったにもかかわらず、出版されている学術論文には、バイリンガルが優れているという結果のものがずっと多かったのです。
 

ですから、バイリンガルに育てると頭がよくなる、というようなことは必ずしも科学的にはっきりと証明されているとはいえないようです。

 

それでも脳に良いバイリンガルや外国語学習

 

ただ、バイリンガルの有利さを示す最近の研究結果に、バイリンガルは認知症の発症年齢が一言語しか話さない人より平均5年近く遅いというものがありました。
これはかなり有力な、バイリンガルの利点を示す研究結果として受け止められています。
 
また、幼少期だけでなく、それ以後も言語を学ぶことは脳へ好影響を与える、という最近の研究結果報告もありました。
 
 
いずれにしても、外国語を学ぶことは、脳によい影響があるという研究結果が最近増えているのは間違いありません。
外国語を学ぶことはそのコトバが話されている外国に行った時に便利であったり、仕事に利用できるというだけでなく、脳にもよいのですから、世界的には外国語を学校で早くから学ぶ傾向が加速しています。
 
こちらでも書きましたが、アメリカでもバイリンガルの学校は増加しています。もちろんアメリカですので地域差がありますが、ユタ州ではなんと今や公立学校の2割がバイリンガル教育を行っているそうです。
 
バイリンガルや外国語学習が脳にもたらす影響についての研究は、世界的に今後もますます活発化しそうです。
 
 
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