日本人の英語力に関してよく言われるフレーズに、「英語は読めるけど話せない」というのがあります。

でも、英語を話す家庭で英語を聞いて育つ子ども達は、当然ですが、他に問題がなければ英語は「自然に」話せるようになります。

では、英語を「自然に」とは言わないまでも、それほど困難なく「読める」ようになるでしょうか。

 

実は、英語は読めるようになることが他の言語より難しいと言われています。

それはどういうことなのでしょうか。

 

 英語圏の子どもが英語が読めるようになるプロセス

 

この質問に答えるために、英語を聞いて話せる、英語圏の子どもたちが英語をどうやって読めるようになっていくのかをみてみようと思います。

日本語のひらがなはなかなか優れた文字システムです。文字数は50と、英語のアルファベット26より多いですが、発音と文字がほぼ合致しています。このため、ひらがなをまずマスターすれば、ひらがなで書いてある日本語はほぼ間違いなく読めるようになります。我々日本人にとっては当たり前のことです。

このような言語はregular orthographyとも呼ばれるそうです。

orthographyの日本語訳は正字法とか正書法となるようですが、その言葉の音をどのように書き表されてきたのかを考える分野のようです。

 

ところが、英語はそのアルファベットの組み合わせにより、発音も変化します。発音自体も日本語より複雑といえます。これは、irregular orthographyとも呼ばれます。

特にアメリカでは、英語が話せても「読み」「書き」が苦手という子どもが多いことがずっと教育問題になっています。

移民の、英語が母語でない家庭の子どもが急激に増加してきた時期にも盛んに議論されていましたが、そうではなく、普通の英語を話すアメリカ人家庭の子どもでもそういう子がいることがずっと問題になっていたのです。

そこでこの分野の教育に関する研究が進められ、様々な方法論が議論されてきました。

その結果、現在の時点で、効果的であるといわれる家庭・学校での教育方法が確立されてきました。

(まだ論争は続いていますのでこれが絶対とはいえません。このことについてはまた別に書いてみたいと思います。)

 

英語ネイティブの子どもが英語を読めるようになるために大事な要素

英語を読むために重要だと英語圏で現在広く認識されていること。それは以下の5点です。

 

Concepts of Printー文字認識

「文字意識」ともいわれるもので、要するに、本やその他の文書には、文字、単語、文章などが書いてあるものである、ということが分かっている、ということです。

当たり前すぎると思うかもしれませんが、米国の教育機関などでは、学習障害の認定の評価などに使われるため、Concepts of Print のチェックリストが用意されていたりします。

これをみると、本の表紙とは何か分かっているか、絵本を見せて、本を読むときは絵ではなく文字を読むのだということが分かっているか、文字は左から右、上から下に読むと分かっているか、などの項目があります。

これはどんな文字言語にも共通するといえます。

 

Phonicsーフォニックス

日本の英語教育でも既に注目されている「フォニックス」が分かっているということ。フォニックスとは、英語の文字がどういう組み合わせだとどういう発音になるかの基本です。

 

Phonemic Awarenessー音素認識

フォニックスと似ている言葉で、区別せずに使われていることもよります。フォニックスほど日本では知られていませんが、これは「音素を認識できる」ということです。

つまり、単語は一つ一つ違う音が組み合わさってできているものであり、一つが違うと違う意味になったりするという事がわかるということです。

英 語では、どこで単語が切れるのか、どの単語と単語が韻を踏むのか、などが分かることが音素の認識につながるといわれます。

このため、プレスクールや低学年では繰り返しのあ る本や、Nursery Rhymeなど、英語のリズムが会得できるような本の読み聞かせが重要視されます。

 

Sight Wordsーサイト・ワード(見てぱっと読みと意味が分かる単語)

英語で日常的に使われる最も基本的な英単語で、約300語ぐらいあります。

この単語を選定した学者にちなんでDolch Word Listとも呼ばれるものが特に有名で、例としてはthe, they, it, was, whyなどがあります。

必ずしもフォニックスの原則に従わないものも入っており、流暢に英語を読むのに不可欠なものとされています。

これを覚えると断然英語を読むスピードがあがります。耳から覚えている英語に読むスピードが追いつくわけです。

アメリカでは日本の幼稚園年長にあたるキンダーから低学年で自然に、あるいはフラッシュカードなどを用いて覚えていきます。

英文にもよりますが、この単語が、この学年の子どもたちが読むような簡単な英文の中の半分から7割以上を占めることになるともいわれています。

サイト・ワードについてはこちらの記事にもう少し詳しく書いています。

Automaticityー自動的にできること

以上の全てのことをいちいち考えずに瞬間的に処理できる能力。

 

 

なーんだ、それだけ、とか、もう知ってることばかり、と思われた方もいるかもしれません。

その通り、英語って難しいとかめんどくさいと思いますが、耳から入って、基本的な英語がある程度分かり、フォニックスの基本や音素認識がある程度できるようになると、英語を文字として読めるようになります。

もちろん、その過程が、何年にもわたるプロセスであり、大変といえば大変なのです。

しかし、その基本があれば、Sight Wordsなどをまず覚え、少しずつ英文を読めるようになります。

そうすればどんどん自分の興味のあるものを読んでいくことにより、語彙数も増えていくのです。

 

でも、今までの学校教育での英語学習では、上のようなやり方ではやってきませんでした。

英語を「読める」のに「話せない」というのはかなり特殊な学習結果だといえるかもしれません。

日本で日本的に読めるように工夫して英語を勉強してきたのだ、といえなくもないですが・・・。

 

いずれにせよ、今では以上のようなことを習得するためのツールも、オンラインや本、はてはソフトやアプリなど、たくさんあるのですからラッキーです。

 

以上5点、ですが特にフォニックス音素認識、そしてSight Wordsとよばれる基本的な英単語、の3点のマスターが、後々の読み書きの力につながっていくのです。

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