前回、英語の L と R の発音と後に続く母音や子音の発音について少し触れましたが、今回はもう少し詳しく、 L の発音を例に説明していきます。
L の発音が難しい理由は1つではない
日本人の苦手な L や R の発音については、すでに様々な「正しい」発音にするための方法があふれています。
そのどれかで L の発音がマスターできれば、何の問題もありません。
ただ、前にも書きましたが、英語の発音というか、言語の発音は、同じ言語でも誰もが全く同じやりかたをしているわけではない、と思うのです。
もちろん、同じような口の形や舌の位置をしている、という基本の基本はあるでしょう。
でも、日本語の発音だって、歯並びとか、舌の位置とか、唇の形とか、一人一人少しずつ違っても、まあ通じる共通点があったり、前後の文脈から推測して問題なく理解しあっているわけです。
当然といえば当然です。
また、ネイティブ同士だと言葉のリズムとかイントネーションも違和感がありませんから、多少発音に難があっても通じやすくなります。
だから、いくら日本人向けに説明された、 L の発音のやり方の通りにやろうとしてもうまくできない場合は、その説明が間違っているわけでは多分なく(まれにそういうこともあるかもしれませんが)、もちろんあなたのやり方が悪いわけでもありません。
それは、もしかしたら、あなたの今の舌の動かし方の癖とか、舌の筋肉の問題などが理由で、一番の発音のポイントとなることができていないからなのかもしれません。
はい、舌の「筋肉」です。マジです。
よく言われるように、英語の L の発音は、日本語にはありません。
だから当然難しいわけですが、それでもこうしなさい、と言われてすぐできる人と、そうでない人がいます。
それはなぜか。
私が思うに、運動神経が良い人と悪い人がいるのと同じで、舌を言われた通りにすぐ動かせる人と、そうでない人がいるということなんだと思います。
今回は、言われた通りに舌を動かすことが難しい人にやってみてほしいトレーニングも紹介します!
では、まずはオーソドックスに、 L の発音から説明してみます。
L の発音の舌の位置のポイント
L の発音での一番のポイントは、舌の位置だとよく言われます。
実際その通りですが、私が一番ぴったりくるなと思う説明をご紹介します。
まず、発音の説明でよく使われる、顔面の鼻のあたりから首にかけての断面図ではこうなります。
舌先が前歯の裏側に完全にくっついています。
この時、舌にはかなり力が入っています!
もう、ギューッという感じで歯の裏側を押しています。
L の発音の時の舌先は、
上の歯の裏側に、青海苔やクッキーの食べかすか何かがついている、それをさぐるような位置
(「耳で覚える!目でわかる! 楽しく学ぶ小学校英語」 藻谷ゆかり 著、p.121 より)
というのが、私が今まで目にした中では一番的確な表現に思えます。
私的には、さらに、
風船ガムを作ろうとして上あごから前歯にかけて、舌でガムを薄く延ばすときぐらい力を入れて、
という表現をつけ加えてもよいかと思います。
口は開けるのですが、あまり大きく開けなくて大丈夫です。
舌の両側から空気が漏れる程度には開けてください。
これができれば、大丈夫です。
そして、次の母音や子音につなげるよう、できるだけ長めにその舌の位置を維持します。
これも重要なポイントです。
舌の「筋トレ」と技
でも、上の説明でいっていることをやるのが苦手な人がいます。
日本語では普段、舌にそこまで力を入れる発音をする必要がないからです。
多分、若いうちだと、以上のような説明でも慣れて発音できるようになりやすいんだと思います。
英語をやり直したい!と思っている世代では、きついなこれ、と思われる方もいるのではないかと思います。
それでもやってみたい!という方には、舌の「筋トレ」をおすすめします。
上ですでに、「風船ガム」と言ったので、もうわかっている方もいるかもしれませんが、ずばり、
「風船ガムや普通のガムなどを、上あごから前歯にかけて押し付けるトレーニング」
が、英語の L の発音のために最適なトレーニングです!
舌先を前歯の後ろにピタッとくっつけて維持するのが難しいのかも?と感じている方、是非やってみてください。
さらに、もう1つ、奥の手をご紹介します。
私、英語の発音を教えさせていただいて、初めて自分で気づいたのですが、私の L の発音の仕方は、舌先を上のようにする、だけではありませんでした。
なんと、下の前歯を使って、舌の下側をはさんで前歯の後ろにくっつけていたんです。
ですから、舌や歯を上の図通りにしていないんです。
自分の方法だと、こんな感じ↓です。
舌かんでます。
そんな L の発音の仕方、どこにも書いてありません。
多分、個人的な癖なんだと思います。
私の英語の発音は、英語教師であった母親が、今でいう早期英語教育を家庭で実践し、英語の歌をよく歌ったり、セサミストリートを見たり、小学生なのに中学校の英語の教科書を音読したりして習得したものです。
母親の英語の発音は決してネイティブではありませんし、私も幼少時に英語圏で生活したこともありません。
でも、日本から外へ出たことがなくても、16才の時に初めて英語圏に行った当初から、発音が悪くて英語が通じず困った経験はほとんどありません。
もちろん、ヒアリングができずに困った経験は山ほどありますが…
L の発音も通じなかったことはありません。
だから、下の前歯で舌を上に支えるのも絶対ありだと思います!
L の後に母音が続くとき
でも、 L の舌の位置をマスターしても、それだけではダメです。
L は単語の最初だけでなく、中間や最後につくこともありますが、日本人にとっては L で始まる単語で、次に母音や子音が続く場合に発音が難しいことが多いので、そのような時に注意することについてみていきます。
例1: light
例えば light を例にしてみましょう。
L の後に [ai ] の二重母音が続きますが、日本語の母音の ア イ だと、口先を使って発音します。
日本語の イ では、上下の唇が横に少し引っ張られる感じにまで開いていると思います。
でも、特に [ i ] は、日本語の イ ほど口を平たく横には開けません。
[ i ] の発音を書いて説明するとやたらとややこしくなりますが、あえて書くと以下の手順になります。
- 日本語の ア よりも、少し下あごの力を抜いた ア の形にする。
- そこから、少しずつ下あごを上げていき、 エ をいう形にする。
- さらに上げると イ になるが、その手前の やや エ よりの イ ぐらいの位置に下あごを止める。
これで [ i ] になります。
つまり、light というときに、L の後の [ ai ] の、特に [ i ] が、日本語の イ のように、口を横に広げた状態で、唇の先で発音していると、英語っぽくなくなります。
ですから、L の後の [ a ] は、まず、L の口の形を横に開かず、下あごを下げて、日本語の ア より少し奥から ア という感じにします。
[ i ] というときには、その [ a ] より、下あごを少しだけ上げて、口を横に開かずに [ i ] にします。
そして、その後、日本人には比較的得意な [ t ] で、後ろに余計な母音を入れないように気をつけて、あまり口を開かずにすると、英語らしい light の発音になります。
例2 little
次の例は little です。
li- までは上の説明と同じですので省きますが、little の場合、特にアメリカ英語では、t の発音が大変弱くなっていることが多くなっています。
そして、その t の後にもう一度、L の発音がきます。
t を発音しようとして、上前歯の裏側あたりをはじこうとするかしないかで、もう一度、L の舌先の位置に戻して終わります。
ト という発音は頭から消してください。
ト とは言わず、上前歯の裏側をはじいてそのまま L のために舌を上前歯の裏に即座につけます。
日本語であえて表すと、「リルー」という感じです。
繰り返しになりますが、[ i ] の音が日本語の イ より、喉の奥まったところから出てくることがポイントです。
それでかつ、舌の位置が合っていれば、確実に通じます。
little は、特にアメリカ英語ではリスニングもしずらい単語です。
これが完璧にできてくると、L と R の違いが分かりやすくなり、リスニングも断然上達します。
実際には、マンツーマンで説明してもらいながらやってみるとわかりやすいと思いますので、そのようなことができる英語の先生を是非近くで探してください。
ここをマスターしておくと、後の伸びが違ってきますので、是非がんばってください!
長くなったので、最後にまとめておきます。
まとめ
- 言葉の発音の仕方は、そもそも何通りもある。その中の基本となる部分で自分が何ができていないのかが分からないと、発音を矯正することは難しい。
- L の発音の一番のポイントは、舌先の位置だが、舌の筋力をかなり使って、前歯の後ろに押し付けてそれを維持する必要がある。
- それが苦手な人は、「風船ガムトレーニング」や、下前歯を使って舌を押しつける方法を試してみる。
- L の後に母音が続く場合、日本語のような口先を使う発音にならずに、喉の少し奥から発音したり、口を横に開きすぎないなどの点に注意すること。
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