英語をマスターするには何時間必要?  

日本の学校教育では、英語教育にかける時間が絶対的に足りないということは分かりました。
それでは何時間かければ十分だと言えるでしょうか。

これに関してはもちろん個人差もありますし、目標とする英語力によっても答えが変わってきます。

どれだけモーチベーションが高いか、集中できるのかでも変わってくるでしょう。

でも目安となる時間数は考えられます。

 

英語習得にかかる時間は成人で2700時間

 

参考になる資料として、アメリカの国務省付属機関のFSIスケールというものがあります。

FSIとは、 Foreign Service Instituteの略で、アメリカの外交官が、任務追行のために必要な外国語を学ぶための外国語専門機関です。

このFSIが、過去何十年にも渡るデータを利用して、英語話者が外国語を習得するために必要な時間を算出しています。

英語と語彙・文法が近い言語から遠い言語との違いもデータになっているので興味深いものがあります。

こちらのサイトでも詳しく説明されていますが、それによると、アメリカ人が、日本語を学んで、一般業務をこなすレベルにまで達するには2700時間かかると言われています。

この数字から、その逆も真なりということで、日本人が英語を習得するまでには2700時間ぐらいかかるのでは、と推測できます。

毎日、かなり集中的に言語を学ことができる環境にいて、それだけの時間がかかるということです。

ただし、このデータは、平均年齢41歳という、成人でも若いとは言えない学習者から集められたものです。

成人でも、集中して時間をかけて勉強すれば、どんな言語でもある程度マスターできるということが分かるデータでもあります。

いずれにしても、日本の中学生が週3回程度、軽く英語を勉強してもあまり身についていかないことに何の不思議もないことを証明するデータとなっています。

 

他に何か参考になる指標はないでしょうか。

 

イマージョン教育での外国語学習時間は2500時間から8000時間!

 

こちらの記事でも触れましたが、バイリンガル教育の一つのタイプにイマージョンがあります。

イマージョンは、もともとカナダで、英語とフランス語のバイリンガル教育推進のために考案された教育方法です。

イマージョンにも、更に大きく分けて早期イマージョン後期イマージョンがあります。

(後期イマージョンの数は少ないので、イマージョンというと早期イマージョンのことを指すことが多いです。更に中期イマージョンという分け方もあります。イマージョン教育について詳しくはこちらなどを参照してください。)

早期イマージョンでは、日本の幼稚園年長にあたるKindergarten(キンダー)あるいは小学校一年生から、子どもにとっての外国語を授業の言語として主に使用していきます。

例えば、英語と外国語の早期イマージョンでは、英語と外国語の授業に用いられる言語の比率が、キンダーで英語10%、外国語90%、一年 生では英語20%、外国語80%というように学年が進むにつれて外国語の方を減らしていき、高学年では英語50%、外国語50%にして問題がないようにな ることを目標としています。

後期イマージョンでは、この外国語授業のスタートが、小学校高学年から日本の中学入学ぐらいの、10歳前後に始まります。このころから、授業言語を外国語で行う学校もあるということです。

このようなイマージョンの学校では何時間外国語を学ぶことになるのでしょうか。

カナダのアルバータ州教育省が出している、家庭で英語を話す生徒がフランス語をイマージョンで学ぶ場合のデータがあります。

早期イマージョン教育で学ぶ生徒が高校卒業までに外国語(フランス語)を学校で学んでいる時間は平均8000時間だそうです。

日本にも日英のイマージョン学校がありますが、その英語学習時間数も同じ程度のようです。

 

ちなみに、カナダのイマージョン教育を受ける生徒たちが、第一言語である英語に学校の内外で触れている時間は、6万3000時間という計算です。

後期イマージョン教育で学ぶ生徒が、高校卒業までに外国語を学んでいる時間は合計2500から3900時間だそうです。

英語とフランス語という、比較的言語間の相違が少ない言語でも、バイリンガル教育では最低2500時間かけているのです。

 

もちろん、カナダは公用語が英語とフランス語で、英仏バイリンガルでなければ応募できない職もたくさんありますので、これだけ時間をかけていると言えます。

でも、日本も高校では英語で「発表、討論、交渉」を行い、「高度」な英語力を養成することを目標とするなら、それに到達するためにどれだけの時間を割く必要があるのか考える必要があるとはいえるでしょう。

 

一般業務を英語でこなすレベルが、FSIのデータから成人で2700時間。

カナダの後期イマージョン教育での外国語学習時間数は最低2500時間。

 

そこまで全員、英語ができる必要がなくても、ある程度自信をもって英語でコミュニケーションするためには、2000時間程度は必要と思われます。

 

英語の学習時間を効果的に増やす

 

日本では、中学の英語の授業時間が年間88時間。3年間で300時間ほど。高校で600時間ぐらいで、大体1000時間ぐらいを英語に使っています。

これでは到底足りないということは分かります。

 

問題は、ではどうすればいいのか、ということです。

時間が足りないのなら、多くする。それは当然の解決法と言えます。ただ、今まで1000時間だったものを二倍にするのはかなり大変です。

 

そこで授業開始学年を早めるという案が出てきます。そうすれば、確かに学習時間数は増えます。

でもそれでも2000時間には到底達しないでしょう。

ではどうすればいいでしょうか。

 

授業開始学年を早め、かつ、最も効率の上がるところの授業時間を増やし、効果を最大にする。

 

ということになると思います。

 

現在の英語授業時間の配分を見て気づくのは、語学学習ではスタートダッシュが肝心なのに、日本では、本格的に英語学習が始まる中学校で 300時間、高校で600時間、と、中学校での英語授業時間がそれほど多くないことです。

学習開始を早めるだけでなく、中学時代の英語の授業時間数を増やすことは必要といえます。

せめて、小学校の中学年ぐらいから、中学校にかけて、毎日一時間ほど英語の授業で慣れていけば、少しは効果があると思われます。

 

これはかなり意見の分かれるトピックです。学校に大きな改革の期待をするより、早期から家庭でも適度に英語に楽しく親しみ、必要に応じて集中的に外国語を学ぶ必要に迫られた時に伸ばしやすいようにする、というのが日本では現実的な道かもしれません。

 

 

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