バイリンガル子育て、「一人一言語」でも成功しない?【継承日本語】

バイリンガル子育てに必須?「一人一言語」の原則とは?

以前にもバイリンガル子育ての失敗について書きましたが、実はそもそもは、子育てに失敗もなにもないとは思うのです。

子育てには、本当に大勢の人手が必要だし、子どもは日々成長しているので、

ある時点だけ見て「失敗」のレッテルを貼るのは、あまりにも安易です。

でもバイリンガル子育てに関して、オンライン上によくある「失敗例」をみていると、特に多いのは、

  • 日本人・米国人夫婦の家庭で、どうしても家の中が英語優勢になってしまうという例。

  • 日本人夫婦の家庭でも、英語の発達の遅れが気がかりになり、子どもが小学生ぐらいのうちにあきらめてしまう。

の2例ではないかと思いました。

もちろん、2例にまとめても、各家庭の状況は様々なので、一概には明確なことはいえないかもしれません。

そんな中で目にする成功例に、特に子どもが小さいころ、両親が

「一人一言語」の原則

を徹底した事例があるようです。

これは、異なる言語を母語とする夫婦が子どもを育てる場合、それぞれが母語で子どもに話しかけたり、読み聞かせをしたりする、という方法です。

英語ではOne Person One Language (One Parent Oner Language)、略して OPOL として、バイリンガル子育ての方法として日本だけでなく、世界各地のバイリンガル家庭で知られています。 

例えば、日本のバイリンガル教育研究の第一人者、中島和子先生の「バイリンガル教育の方法ー12歳までに親と教師ができること」にも、イタリアに住んでいたドイツ人(母)・イタリア人(父)カップルの成功例が紹介されています(p.56)。

子どもがバイリンガルに成長する様子を克明に記録したのは父親だったことから、父母ともに、幼少期から熱心にそれぞれの言語を使って子どもたちに接していたのだろうと推測されます。

またこちらで、米国人と結婚した日本人女性が、子どもが11歳と5歳の時点で、子どもが生まれたときから一人一言語の原則を徹底し、バイリンガル子育てが成功したと書いています。

周りに誰がいても、どんな状況でも、自分は100%日本語、ご主人は100%英語で話し掛けたと説明されています。

日本語が難しい?

とはいえ、私が過去15年ぐらい、周囲の様々な国際カップルを見てきたり、話しに聞いたりした限りでは、一人一言語にしていても、どうしても英語になる、という家庭は多いと感じます。

だとすると、日本語の維持が難しいのは日本語が習得が難しいから、などという考えも出てくるかもしれません。

でも日本で育った場合、父親が英語、母親が日本語の家庭で英語の維持が難しくなった例もこちらで紹介されています。

最近、「ハーフ」だからって英語ができるわけじゃない、という主張も目につきますが、そのような子どもも、少しずつ増えているのだろうと思います。

でもこれは、英語の習得が難しいからなのか?

と考えると、必ずしもそうとはいえないのではないでしょうか。

英語ももちろん簡単な言語ではありません。

また、日本語もひらがな、カタカナは、習得すればすぐに読むことはできるようになるものの、漢字は少なくとも小学校で習う1000字ほどがわかっていないと、新聞やパンフレットはなかなか読めません。

子どもが継承語に意味を見い出せるかどうかが成功への鍵

特に英語圏に住んでいる家庭が日本語を失ってしまう理由は、おそらく日本語がその地域で少数言語で、維持する意味を子どもも、そしておそらく親も、その時点で見いだせないということが大きいと思われます。

日本では、英語ができると「すごい」と思われることも多いはずですが、それをしたくないというのは、英語を話すことで異端視された経験などがあり、皆と同じになりたいと思ったからかもしれません。

いわゆる同調圧力、社会的プレッシャーが高い、社会的に出る釘にならず、みなと同じようにふるまうことが求められることが多いといわれる日本。

日本に限らず、子どもが成長する時、その時点での自分の周りの多数派と同じになりたい、と思うのはよくあることです。

これは結局、子どもがどのような文化的アイデンティティを大事に思うのか、という問題でもあります。

親は、そのような子どもの思いまでコントロールすることはできません。

ただ、このようにアイデンティティについて考える時期になる前の、5歳ぐらいまでの幼少期に、大好きなお母さん、そしてお父さんの話す言葉がしっかり伝わっているかどうかは、重要かもしれません。

上で、英語を拒否するようになった子どもの場合でも、思春期まで英語も日本語も維持していたのなら、立派なバイリンガルであり、失敗例として取り上げるのはちょっと違うような気もします。

ですから、子どもが母親と日本語で話すことについて、否定されることなく、称賛されないまでもごく普通のことになっていれば、日本語の維持が成功する確率が高まるのではないかと思います。

これは時代にもよると思います。

北米では、日本人があからさまに差別されていた時代がありましたし、日米開戦後は、日系人は強制収容されました。

そのような歴史的背景の中、日本語の維持など意味がないと思った家庭がほとんどだったと思います。

でももし、現在も英語圏での日本語とのバイリンガル子育てが(ほかのバイリンガルと比べて)難しいという統計があり、成功しない例が多いということであれば、幼少期の日本語を話す親との接触時間や質だけでなく、両親や周囲の人、社会の日本語に対する姿勢なども、重要な要因になってくるのではないかと思います。

とはいえ一人一言語の方針も、両親の共通語が一つしかない場合、それを貫くのは現実的ではないかもしれません。

家族団らんは、どうしても英語、になるでしょうし、それがいけない、などと言っていたら家族が崩壊してしまうでしょう。

これも徹底する、などと気張らず、子どもと一対一で話すときに自分が話したい言語は何かをよく考え、それを徹底する、と考えたほうがいいかもしれません。

バイリンガルに育つ可能性のある家庭をとりまく環境は、実は驚くほど違うと思います。

気軽に相談できるオンライン・コミュニティについて、興味のある方はぜひご連絡ください。

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