バイリンガル子育て、続けるポイント2点【継承日本語】

前回は、バイリンガル子育ては「出だしが肝心!」ということで、最初に親ができることについて書きました。

 

特に、2言語の社会での影響力に大きな差がある場合、マイノリティ(少数派)の言語の母語を育てていくのは、思っているより大変です。

なぜなら、より広い社会でその言語が「それほど歓迎されていない」と思う経験を、子どもも、親も、ほぼ確実にすることになるはずだからです。

アメリカで”I love your accent!” なんて言われているのは、たいていヨーロッパ系の人。

他の、アジア系などでアクセントの強い人は”Huh?”と聞き返されるだけ、なんてことは、あまりにもありふれた光景です。 

それどころか、アメリカでは、英語の次に話者が多いといわれるスペイン語でさえ、話をしているだけで「国に帰れ」とか、「ここはアメリカだから英語を話せ」と言われたことのある人も少なくありません。

アメリカのバイリンガル事情

米調査機関ピューリサーチセンターによると、コロナ禍前、そのような差別的な言葉を受けたことのある人の割合は2割程度ですが、そのような差別的な扱いを1回でも受けたことのある人の割合は、4割近くに上ります。

そして、これらのスペイン語話者、あるいはバイリンガルの人々の多くは、生まれたときからアメリカに住み、社会に貢献している、れっきとした「アメリカ人」だったりします。

 

アメリカには、反移民政策をとったことが記憶に新しい、トランプ政権のずっと以前から、メキシコ系移民の増加を危惧し、英語をアメリカの公用語に指定しようとする「English Only」という運動もあります。

それでも、バイリンガルの良さが研究でも裏付けられるようになり、バイリンガルを目指す家庭も増加したとみられ、過去40年ぐらいの間でアメリカに住むバイリンガル人口は倍増しました。

とはいっても、アメリカのバイリンガル人口は全体のわずか2割程度。

カリフォルニア州など、移民が多く、多文化・多言語化が進んでいる地域ではより多く、5割に迫っていますが、その他の地域では、非英語話者やバイリンガルに対する偏見もまだまだ根強いのではと思われます。

ですから、バイリンガルで母語を子どもにもっと使ってもらうためにできることは、母語が実際に使われ、認められ、文化・社会に貢献している貢献していることがわかる体験を、子どもたちにさせてあげること、がとても大事です。

もっと日本語を学ばせるにはどうしたらいいのか、とか、日本語を使ってくれないときにどうしたらいいのか、という悩みは良くありますが、その場合、「なぜそうなったのか」を考えることが大事です。

メディアを「賢く」利用する

そして、可能であれば、お母さん(お父さん)が大好きな幼少期に、「十分過ぎる」ほどマイノリティ言語で楽しい時間を持てるといいですね。

どれぐらいの時間が必要か、という話もありますが、言語を育てるために一日中、ある言語を使っていなければ発達しない、ということはないようです。

テレビやラジオをつけっぱなしにしておいても、言語習得に大きな効果はないと言われています。

でも、メディアを「賢く」利用しない手はありません。

我が家では、子どもが小さい頃は「車の中の歌は日本語」でした。

たまに英語の歌も入っていましたが、童謡から始まり、アニソン、歌謡曲、ドラマの主題歌など、いつも日本の歌をかけまくっていました。

アニメのドラマシリーズの音源を見つけてかけてみたり、嘉門達夫の、子どもが聞いても差し支えないギャグ炸裂の歌を流したり。

いやー名曲w

親子でげらげら笑ってたなあ。懐かしい。

「この中にひとり」っていうのもおもしろいです。

注:子供向けでない歌もありますので、ご注意ください。

(下の子は、あまり覚えていないらしいので、これからきかせてあげなきゃ。

でも、もしかしたら彼女はおもしろいと思わないのかな…?)

ポケモンの歌でさえ、四字熟語が入っていたりしますから、日本語のセンスを身につけるのには、わずかだと思いますが役立ったと思います。

子供がある程度大きくなってからは、アニメだけでなく、大人が見てもおもしろいと思う日本のドラマも、よく一緒にみました。

朝ドラや大河ドラマだけでなく、Heroとか、社会派、刑事もの、などなど、とにかく面白いもので子どもも楽しいもの。

今になって振り返ると、

日本語が使われていて、楽しい世界がある。

という意識も、普通にアメリカに生活していて、日常会話でしか日本語を使わないと薄れていくのじゃないかなという思いもあったのかもしれないと思います。

もちろん、日本を理想化するのではなく、ニュースの話題などで普通に会話することも必要でしょう。

とにかく日米、どちらの社会も完ぺきには程遠いという、当たり前の姿勢をつけてほしいなと思っていました。

そのような親の思いは、一緒に楽しんだ時期があれば、伝わるんじゃないかなと思います。

念のために書きますが、この方法が絶対によい、と推薦しているわけではありません。

我が家では、親が子供と日本語で楽しむために、このようなこともしていた時期がある、という一例です。

日本語で親子で楽しめることを少しでも、見つけるは、我が家にとっては大事なことでした。

日本語「を」学ぶのではなく、日本語「で」遊び、楽しみ、学ぶ機会を作る

バイリンガル子育てをしていると、どうやったらもっと日本語の語彙を増やせるか、とか、日本語を勉強してくれるのか、という悩みを持つ人も多いです。

でも、よく「これだけで英語ができるようになる!」というフレーズがほぼ誇大広告であるのと同じで、このような質問に「こうすれば子供が日本語を勉強します」というストレートな答えは、存在しないんじゃないかと思います。

もし悩みがあり、それが本当に深刻だったら、その最大の原因は何か、考えてみる必要があります。

こちら↓でも書きましたが、「日本語を話したがらない」子、あるいは「本を読まない」子は、やはり、何らかの理由があるのでしょう。

日本語や日本人に対するネガティブな経験をしていたとか、あるいは単に日本語や活字に触れる機会が、少しだけ、足りなかったのかもしれません。

 

胎児も、妊娠後期になると母語とそれ以外の言葉を聞き分けられるといいます。

例えば、英語が得意な母親になる女性と、日本語ができない男性のカップルがいて、仲睦まじく過ごしていたら、その胎児は「大好きなお母さんの言葉」は、「英語」だと認識するのではないでしょうか。

そのような環境すべてを考慮して、「十分な日本語」がどの程度か、わかるような指標は今のところありません。

だからお母さんの努力が足りないから「日本語を話さない」ことは、まずないでしょう。

それでも、もし足りない場合、どうやったら増やせるか。もっと増やすにはどうしたらよいのか。それが可能なのか。

ということを、現実に則して考える必要があります。

日本語を話すことがいやではないとして、日本語を話す動機を保たなければ、それがマイノリティ言語である限り、英語に比べて維持が難しいのは当然です。

そのような不利な環境で、日本語を使ってほしければ、使わざるを得ない、あるいは使うと有利な環境を整えるしかありません。

日本に帰国するのも一つの手ですし、補習校などに通うのも一つの手。

それ以外にも、この時代、日本語「で」学ぶ機会はオンラインでたくさんあります。

子供の興味に寄り添って、そのような機会を作っていけば、日本語を使い続けるのではないでしょうか。

そして、人間の脳は長い間かけて発達していくこと、第二言語を学ぶことは、脳にも良いことを考えれば、あきらめずに、なるべく「楽しく」継続することが一番だと思います。

 

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