APっていったい何?
アメリカで子育てしていると、高校生(9~12年生、日本の中3以上)になると「AP」という特別なクラスがあるらしい、という情報が耳に入ってきます。
このAPとは「Advanced Placement」の略で、
高校生としては学習進度が進んでいるという意味を持つ名称ですが、
要するに、高校生のうちに大学レベルの内容の学習をするクラスのことを指します。
正確にはこの場合、単なる「AP」ではなく「AP course(APクラス)」と表現します。
というのは、APというのは「AP Exam(AP試験)」を指すこともあるからです。
APクラスとは、基本的にはAP試験の準備のための特別なクラスという意味があります。
APクラス以外にも、基礎クラス的な通常のクラスより進度が早いHonorsクラスというのもあります。
例えば、English だったら、English, English Honors, English Literature AP などのクラスがあります。
9年生の時は普通のEnglish, 10年生ではEnglish Honors, 11年生ではEnglish Literature AP、
という取り方も考えられます。
HonorsクラスとAPクラスは、GPA(成績の平均点)を上げるために有効です。
GPAはA=4, B=3,…というように成績を数字にしてその平均を表したものです。
普通のクラスは上に書いたようにA=4の4段階評価ですが、
HonorsやAPのクラスは5段階評価でAをとれれば5として計算されることも多いです。
普通は最高評価が4のところ、5がとれる、またBでも4になるのでGPAを上げることができるのです。
ではAP Examとは何かというと、概要は以下のようになります。
- アメリカの大学・大学院進学関連の共通テストを管理統括している非営利団体、
College Boardが考案した試験制度。 - 2023年現在38教科のAP試験があり、毎年5月に各高校で実施される。
- 試験は有料で受験料は2023年現在1教科97ドル。
- AP試験の結果は1~5の5段階で評価され、3以上だと大学入学審査の際にアピールポイントとなったり、大学によっては大学の単位として認められることがある。
- 試験の難易度は教科によってばらつきがある。
APクラスとAP試験
AP試験のある38教科については、College Boardのウェブサイトに公式な説明がある通りです。
上にも書いた通り、これらのAP試験のための準備をすることを主な目的として、主な高校ではAPクラスを高校の授業として受ける(高校の卒業単位として取る)ことが可能となっています。
全38教科のAPクラスが提供されている高校は少ないと思いますが、大規模で大学進学率が高めの高校では、一通り主要科目のAPクラスは提供されているはずです。
例えば、
AP English, Calculus AB, AP Biology, AP Physics, AP U.S. History, AP Spanish…
などはかなり一般的といえます。
AP試験は、上に書いたように1~5の評価がされますが、各試験の難易度は幅があると言われています。
難易度は毎年、各教科について発表される
「3以上の評価の割合が高かった教科」ランキングや、
「評価5(最高判定)の割合が低かった教科」ランキング
などを参考に判断できると考えられます。
こちらのサイト↓によると「評価5(最高判定)の割合が低かった教科」ランキング上位は以下のような教科でした。3以上の評価の割合が高かった教科の表と比べてみると興味深いです。
Art and Design: 3-D Design
|
6%
|
Physics 1
|
8%
|
French Language and Culture (Standard Group) |
8%
|
German Language and Culture (Standard Group)
|
8%
|
Spanish Literature |
8%
|
Environmental Science
|
9%
|
English Language and Composition |
10%
|
Computer Science Principles |
11%
|
Italian Language and Culture (Standard Group)
|
11%
|
United States History
|
11%
|
Art and Design: 2-D Design |
11%
|
Art and Design: 3-D DesignLatin
|
11% |
また、以下のサイトではAP試験の難易度を興味深いグラフにして示してくれています。
このようにオンライン上にもいろいろな情報がありますが、上級生や友人からの口コミもとても大事です。
特に同じ高校の同級生や上級生で実際にAPクラスやHonorsクラスをとったり、試験を受けたりした人の生の声はとても貴重で参考になると思います。
もちろん、自分自身が「何のためにこのAPクラスをとるのか?」ということを説明できるぐらい、しっかり考えて授業をとる計画を立てていかないと、情報に流されてしまうことにもなりかねませんので、注意しましょう。
APクラスの取り方
では、APクラスはどのようにとっていくものなのでしょうか。
以前こちらの記事でも書いたように、アメリカの高校は単位制です。
「単位をとり忘れて予定通り卒業できない!」などということがないよう、大抵の学校では
アメリカの高校1年生=9年生になる前に、今後どのように授業をとっていくか、生徒に計画を立てさせ、
カウンセラーや先生が問題がないかチェックする体制ができています。
自分がどのようなクラスをとっていくべきかわからなければ、まず学校のカウンセラーに相談してみましょう。
ごく一般的には高校1年生(日本の中3)=9年生からAPクラスをとり始める生徒は少数派です。
あるサイトでは、以下のような取り方を勧めていました。
学年 | APクラスの数 | おすすめのAPクラス |
9年生 | 0-2 | Human Geography, Environmental Science, Computer Science Principles |
10年生 | 1-3 | Psychology, World History, European History, Art History, Economics |
11年生 | 2-4 | US History, Biology, Chemistry, English Language |
12年生 | 3-5 | Physics, Calculus, English Literature, Foreign Language, Statistics, US Government |
これはほんの1例です。
このような取り方をする高校生が多いかというと、決してそうではないと思います。
例えば、日本語が得意な生徒は9年生や10年生の時点ですでに、AP Japaneseの試験で3以上の評価をとることができるかもしれません。
また、理数系に関心のある生徒は、10年生、11年生時にBiology, Physics, ChemistryでAPのクラスをとるために、他のAPクラスをとる余裕はあまりないかもしれません。
APクラスは、アメリカの高校4年間の間に、自分が関心があったり、得意だったりする教科を中心にとっていくものです。
APクラスを全くとらなくても、高校を卒業することはできます。
ただ、例えば数学ではごく一般的な真ん中の進度だと、高校4年生時には自然とAPクラスをとることになります。
※アメリカの中高の数学の進度については、以下の記事を参照ください。
また、アメリカの大学入学審査では色々と大事な要素がありますが、かなり重要なのが高校の成績です。
ある特定の分野のAPクラスをとり、AP試験でも高評価を得られれば、自分がその分野に関心があり、かつ能力も高いということを成績や試験結果で示すことができるので、大学の入学審査官にもアピールポイントになる、というわけです。
ただし、だからといって10年生ぐらいからAPばかりをとると、宿題に追われることになります。
APでは1時間の授業につき毎日1~2時間の宿題が出されると言われています。
AP English などは読書課題の量も非常に多いです。
また、APの難易度だけ参考にして、興味もないAPクラスばかりをとって大学の入学審査官に「楽してGPAを上げようとしている」のではないかという印象を与えるのは避けたいところです。
アメリカの大学がそこまで細かく成績やクラスの取り方をみるのか、疑問に思う人もいるかもしれません。
でも、入学が容易ではない多くのアメリカの大学では、私立・州立を問わず、かなり細かく、入学志願者一人一人のプロフィールをみています。
APクラスの取り方についても、カウンセラーや先輩に相談することはとても大事です。
AP試験についての注意事項
実はAPクラスをとっていても、必ずしもAP試験を受けなければならないということはありません。
AP試験の申し込みは前年の秋で、試験料金も高いので、直前になって受けるかどうかを決めることは難しいですが、秋にクラスが始まってから1か月ほどは、考える時間があります。
ただし、AP Japaneseの試験を受けたいと思っている生徒の通っている高校で、外国語として日本語が設置されていないこともあります。
もちろん、高校でAPクラスをとらなくてもAP試験を受けることはできるのですが、そのような高校では、AP Japaneseの試験も受けられないことがありますので、近くの他の高校で受けることができるのかどうか、AP試験の申し込みをする前の年の秋、学校が始まってすぐに、あるいはそれ以前から、カウンセラーに相談する必要があります。
まとめ
今回はアメリカの高校生がとることができるAP(Advanced Placement)クラス、そしてAP試験の基本情報について書いてみました。
APクラスは大学レベルの内容を扱う、各高校で卒業単位に認められる高校のクラスで、各高校で提供されているクラスは異なります。
APクラスはHonorsクラスと同様、GPAに換算する際にはA=5として計算されることもあり、GPAを上げることが可能です。
毎年5月に行われるAP試験の準備という性格も強いですが、必ずしもAPクラスをとれば試験を受けなければならないということはありません。
自分の興味がある得意分野のAPクラスがあれば、カウンセラーや先輩と相談の上、積極的にとっていくと大学入学審査で評価されることにつながります。
今回はあまり書きませんでしたが、AP試験の結果によって、また大学によって大学の単位として認められることもあります。
これについてはまた改めて書きたいと思います。