アメリカの中学・高校の数学:何年生で何をやっているのが「普通」?

毎日子育てに勉強にお仕事に! 大変お疲れ様です。

今日は、アメリカの中学・高校での数学の授業は何年生で何をやっているのか、
特にアメリカでの大学進学を考えている家庭の立場で書きたいと思います。

アメリカの教育は学区によって異なる部分も多いのですが、主に中学以降、
数学はほぼどこでも「習熟度別」のクラス編成になっています。

ただ、その分け方は各学区で微妙に違います。

カリフォルニアのDavis Joint Unified School District(デービス学区)
のことは多少分かっているので、この学区を例に説明します。

私は数学についてはまったくの素人なので、内容についてはあまり触れません。

それでも、日米の教育制度の違いも踏まえた上で、
アメリカの中学・高校の数学の習熟度別の授業について解説したもの はあまり見たことがなく、
自分でも最初はよく分からずにとまどった経験があるので、今回、記事にしてみようと思いました。

何を何年生とっているのが「普通」なのか、という質問の結論を先に言うと
大きく分けただけで3~6つのパターンがあり、さらに枝分かれしていくので
普通の幅はとっても広いとも言えますが、あえて
ごく標準的といえるのは下の表のBコースをたどるケースではないかと思います。

高校卒業までの数学履修:3コース

デービス学区では、中学以降の数学はだいたい、下の表のA, B, Cの3つのレベルに分かれています。

真ん中のBが標準的な子、Aは数学が苦手な子、Cは数学が得意な子 向けのコースとなります。

 

Common Core Math(コモン・コア・マス)、Integrated Math (インテグレーテッド・マス)というのは、少し前にアメリカで行われた算数・数学の教育改革以後から使われている科目名です。
それ以前は〇年生では代数、〇年生では幾何、微積分、・・・というように、数学の分野別に学年で区切って教えていたようです。

現在では、様々な数学の分野を毎年、少しずつ学んでいくという方針に変わりました。

さらにコモン・コアには、その教え方についても新たな理論的背景があり、これについても賛否両論、色々な意見があります。

日本語で分かりやすい説明があまり見つかりませんが、英語だと下の説明が比較的簡潔で分かりやすいと思います。

要するに、算数・数学は単なる計算ドリルなどの反復練習ではなく、日常生活の状況に当てはめて説明できる思考力や洞察力が大事と考える教育方法、といえます。

 

7年生

7年生、つまり日本の中1までは全員それほど差がなく、同じようなクラスをとります。
ただ、A・Bコースはまったく同じで Common Core Math2 ですが、
Cコースは Common Core Math 2/3  になっています。
Common Core Math 2/3 というのは、A・Bコースの子たちの2学年分の単元を1年で終わらせるカリキュラムになっています。

つまり、授業の進度が速いということです。

デービス学区は、アメリカでは珍しく、日本と同じように小学校が6年生までなのですが、
まず小6の後期に、Common Core Math 2/3 に行くかどうかが決まります

春ごろに適性テストもありますが、いきなりテストを受けるのではなく、
本人(家庭)の希望により 2/3に行くための準備をする授業に参加することができます。

適性テストの結果と先生との話し合いで、やはり7年生は Common Core Math 2  から履修したほうが良いということになればそこからスタートします。

8年生

そうなると8年生では

A・Bコース が Common Core Math 3,
Cコース が Integrated Math 1 

をとることになります。 

表を見ると分かりやすいのですが、Bコース の子たちは9年生でIntegrated Math 1をとるので、
8年生の子で Cコースの子は9年生と一緒の授業をとることもあります。

グループワークの時間もあるので、9年生の子の中には8年生に問題の解き方を教えてもらうことも出てきたりすると、「あなた8年生?頭いいんだねー」などということを言う子も、いるようです。

ただ、こういうことになるのはデービス学区が日本のように中学のキャンパスでは7~9年生までが一緒に学んでいるからです。

アメリカではこのような分け方をしているところは少数派で、9年生から高校1年生として高校のキャンパスに通う方が一般的です。だから8年生と9年生が同じ教室内にいるという状況はあまりないと思います。

9年生

さて、大学入学審査に向けて成績も気になってくる9年生、アメリカの高校では一般的には1年生となる学年では、Aコースでもう一度Common Core Math3 をとる選択肢があります。

でも、7年生の時からAコースで、数学が苦手だった子も、8年生まで順調に来ていれば、そこで真ん中の標準、Bの進み方に入ることができます。

Cの子たちは9年生では Integrated Math 2 をとります。

10年生

Aコースは Integrated Math 1

Bコースは Integrated Math 2

Cコースは Integrated Math 3, あるいは Accelerated Integrated Math 3
のどちらかに分かれます。

これまでの成績などで、どちらに進んだ方がよいかが決まってきます。

Bコースも 11年生で同じように分かれていきます。

11年生

Cコースの中でも 10年生でIntegrated Math 3 をとった子たちは Precalculus へ、
同じく10年生で Accelerated Integrated Math 3 をとった子たちは Calculus AB をとります。
Calculus AB はAP(Adbanced Placement)といわれる、いわゆる大学レベルのコースとなります。

APのクラスは 上図で黒いハイライトをしてあります。

12年生

Cコースの子たちの中で 11年生で Precalculus をとった子は Calculus AB をとります。

11年生で Calculus AB をとった子は Calculus BC をとります。

標準的なBコースの子も Precalculus, あるいは Calculus AB まで進み、

一番数学が苦手なAコースの子も Integrated Math 3, あるいは Accelerated Integrated Math 3
まで修了するようになっています。

ちなみに、大学進学のためには最低、

①Integrated Math 3  の単位を取得していること、
②高校4年間のうち最低3年間、できれば4年間数学を履修していること

が必要とされています。

            下↓はレベルにより 8、9、あるいは10年生が使う Integrated Math 1  の教科書です。

   アメリカでも教科書を使う先生は多いです。ただ、日本とは違い、教室にも教科書が置いてあっ
   たり、プロジェクターを使って説明し、問題はワークブックやオンラインで取り組むことも多い
   ので、毎日持っていかなくていいことも多いです。そこは先生によって異なります。

MathTextbook1

MathTextbook2

標準コースで問題ない

当然ながら、APの Calculus BC まで、デービスの公立高校で順番に授業をとっていくには、
7年生の時に Common Core Math 2/3 に入っていたほうがいいです。

でもアメリカでは高校が義務教育なので、必ずしもそこまでとる必要はありません。
数学が苦手な子も、毎年数学をとればIntegrated Math 3  まで修了できるように考えられているということは、ほぼ全員が義務教育で高校2年生レベルまではいくことを目標としているということす。

標準コースでも順調にいけば最終学年で AP の Calculus AB まで行けるのですから 何の問題もありません。

 

日本で最近、アメリカの「ギフテッド教育」が話題になっているのを目にしますが、
ギフテッド認定された子でも 数学が得意でない子もいますし、
このようなA~Bの習熟度別でも間に合わず、さらに「飛び級」する子もいます。
そのようなケースは個別に対応しています。

アメリカではもともと、特に算数・数学に関しては、小学校のころから習熟度別で対応することが普通に行われているので、中学校以降はさらにそれが多様化していくイメージです。

つまり、ギフテッドであろうとなかろうと、数学はCommon Core 3 を7年生でとる子もいれば、9年生になってもとっている子もいるわけで、数学については子供によって2学年の開きが生じることは実に、よくあることなのです。

ABCのコースの通りではなく、夏休みに別の機関で数学のコースをとって、一つずつ上のレベルに上げていくという方法も、学校の先生からは推奨されていませんが、あります。

例えば、一番進度の速い取り方だと、9年生でIntegrated Math2  をやっていることになるはずですが
このクラスに8年生もいます。
夏休みなどに1学年分、オンラインコースで履修し、それを学校側が認めればそれも可能です。

つまり、数学が得意なことそうでない子の差は、2学年どころではないことも普通にあります。

 

また日本から引っ越してきて、最初学年を1年遅らせたりした場合、数学のレベルが合わなくなってくることもあります。

そのようなケースにも、個別に対応してもらえることがありますが、待っていてはダメで、
こちらから先生やカウンセラーに積極的に働きかけることが必要です。

 

逆に、最初は数学に普通に強かったギフテッドでも Calculus AB, BC レベルは 毎日何時間も宿題をしないとついていけないことも多く、それまでの数学とは少し異なるので、その後成績がどうしても今までより下がってしまったりすることもあるようです。

家庭でも、ただ12年生で最終的にパスする科目を目指すことを奨励するのではなく、目の前の子供がちゃんと自分の将来を考えながら、自分に合ったペースで、理解を深めながら学習するのを支えられた方がいいのではないかなと思います。

ただせかして、子供が興味があるわけでもなく、本当に普通のペースの数学の授業が遅すぎると感じて退屈しているのでなければ、無理やり勉強させるのはあまり意味がない、むしろ有害ということが多いと思います。

実際、年々加熱する大学審査突破のため、大学入学準備ができていることを示そうと、APコースをたくさんとる高校生も多いのですが、 ただそれだけでは結局、思ったようには大学に受からないのです。

高校生らしい活動をして、考える時間を持つ、つまりバランスをとることが大事です。

 

我が家の場合

うちの子供たちは全員、7年生で Common Core Math 2/3  に行くことが可能でした。
でも約2人は最初、それを拒否。

そのうち1人は、最終的には12年生で Calculus AB までいきました。
今では最初、なぜ拒否していたのか、その理由もとても、よく分かります。

1人は、非常に文句を言いながらも7年生で Common Core Math 2/3  をとり、結局はそれが自分に合っていたと思っているようです。

同じ知的レベルの子供でも、そしてどんなに同じように育てているつもりでも、
その子をとりまく環境は異なることはよくあります。

我が家の場合も然り。

目の前の子どもとその環境をみて、その時親子で考えて、下した判断が最善で最良の判断。

そう思うようにするしかありません。

 

絶対に7年生の時に Common Core Math 2/3  に行かないと 大学進学の時に不利になる 
という考え方も根強いようですが そうでないこともあります。

成績を気にするよりも もっと大事なこともある。

そう思うことができれば、親子共に楽になれることもあると思います。

 

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