(Photo by Guven Gunes on Unsplash)
目次
セミリンガルに悩む時期
子育て、毎日おつかれさまです!
今回は、よくあるバイリンガル子育て相談について書いてみたいと思います。
子育てにいろいろな山があれど、中でも言葉の発達は
とても気になる部分だと思います。
子供の言語発達の様子を間近でみるのは わが子が初めて
という親が普通だと思いますので
言葉がいつ出るかというだけでなく、その量や質、流暢さなど、
言葉のあらゆる面について
何を基準にしたらいいのかもわからないことも多いと思います。
それがバイリンガル、トリリンガルとなってくるとなおさらです。
※以下では「多言語」話者も含めてバイリンガルという言葉を使っていきます。
特にバイリンガルだと「言葉が遅い」「間違える」「イントネーションがおかしい」
などの原因がすべて「バイリンガル」だからという理由で片付けられてしまうことも多いようです。
バイリンガルが言葉の遅れの原因になる、ということはことごとく、過去数十年にわたる調査・研究で否定され続けていますが、まだまだ広く受け入れられていないかもしれません。
また、バイリンガル子育てで一番悩ましいのが、「両言語共に中途半端」、
いわゆる「セミリンガル」や「ダブルリミテッド」と言われる状態かもしれません。
そして親が自分の子供が「どちらの言語も中途半端」と感じる時、「バイリンガル子育てに失敗」したと思うことが多いと思います。
これまで個別相談やバイリンガル子育ての座談会を含め、
周囲のバイリンガル子育て中の保護者の方、100人超と話をした経験から、
親がそのように感じるタイミングは、
お子さんが小学校低学年から中学年のころが多いと感じます。
つまり、6才~9才ごろ。
これは、子供が学齢期に入ってどうしても周囲の子と比べる機会が増え、自分の子供の発達についてつい、心配してしまう機会が増えるからではないでしょうか。
例えばバイリンガルの子供があまり多くない地域にいると、学校の言語、例えば英語が「遅れている」と感じたり、かといって「日本語ができる」わけでもないと思ってしまったりするものです。
これは「本当に心配」な場合と、「そうでない」場合に分けらます。
※この時期以前、言葉が出てくる時期から就学前にかけての2才前後~5才ぐらいのころも、バイリンガル子育てをしている親御さんが心配することは多いと思います。
でも、そのころは個人差も激しく、一概に言えないことが多いと思うので、その時期についてはここではとりあえず置いておきます。
心配がない場合
学校や家の外では英語、家庭内では少なくとも保護者1人とは日本語を話しているという家庭を例に考えてみます。
現地で学校教育が開始して1年ぐらい過ぎても、学校で英語を話す周囲の子と上手に意思疎通ができない、あるいは勉強に遅れが出るといったことで、先生から問題視されてしまうことがあります。
これにも、実に様々なケースがあるのですが、単純な例で考えてみます。
日本語の発達が順調なケース
これには、例えば以下のような状況のお子さんが該当します。
・就学前までの日本語の発達は順調で、日本語でのやり取りは年齢相応にできる。
・文字にも興味を示し、日本語の年齢相応の本を読むことができる。
このようなお子さんは、英語にも多少は触れていて、流暢な会話はできなくても指示は分かる。
というケースも多いです。
このような場合は、このまま日本語を年齢相応に伸ばしてあげられるよう、支援を続ける一方、良質な英語に触れたり、英語を積極的に使う必要のある機会を増やしたりすることで、英語はほぼ必ず追いついてきます。
ですから、この場合は心配はほぼ不要です。
(もちろん、その後も全く心配ないという保証をするものでは、決してありません。)
この点についてはこちら↓の記事もご参照ください。
英語の発達が順調なケース
これに該当するのは、例えば以下のようなお子さんです。
・日本語で話しかけても英語で返事をする。
・テレビなども英語の番組を好む。
・一人の親は英語が母語、あるいは読み・書き・話す(発音も含め)が母語レベルで、子供とも英語で問題なく意思疎通ができる。
これはつまり、日本語は年齢相応に理解できているものの、自分から話す必要性や興味もないため、いわゆるpassive bilingualといわれる状態になっているといえます。
日本語を話す必要性があると子供が思うか、思わないかは、実に様々な要因で決まってきます。
決して保護者一人の責任ではありません。
このような場合でも、家族関係がこじれない程度に日本語のインプットも楽しく続けることができれば、後々、日本語や日本文化に興味がわいたときに必ず役立ちます。
ですから、この場合も言語発達についての心配はほぼ不要です。
もちろん、日本語をもっと伸ばしたいという悩みはあるかもしれません。
でも、「言語の発達に心配があるかどうか」という点から考えると、
心配はないということになります。
少し心配がある場合
日本語・英語の発達がともに遅れ気味のケース
これに該当するのは、例えば以下のようなお子さんです。
・家などで日本語は話すものの、読み・書きが学年レベルよりかなり遅れている。
(学年レベルの読書ができない、漢字が全く読み書きできないなど)
・英語でも日常の学校生活に支障はないものの、問題文を読んだり、説明がうまくできないことが頻繁にあり、子供も親もストレスがたまっていく状態。
これは、少し心配なケースですが、子供はまだまだ成長期。
伸びしろは必ずあります。
また、高学年になっても低学年向けの本しか読めない場合など、
親としてはかなり気になるかもしれません。
でも実は、低学年向けと言っても、日本語であれば高度な文章が使われている
ことも多いのです。
それでも、このような場合に、もう日本語はあきらめたほうがいいのかどうか、迷うこともあると思います。
この悩みにどう向き合っていくかは、過去・現在の環境や今後の方針によって、どう考えて行ったらいいのかが変わってきます。
ですから単純に、例えばだれか先輩保護者が自分のバイリンガル子育てでこうだったから、自分もそうすれば解決する、という問題ではないのです。
そもそも、これまでどの程度日本語のインプットがあったのか。
現在、良質なインプットを続けるのがどの程度可能な環境なのか。
現在の親子関係はどうなのか。
そして将来を考える際、家族や周囲の関係をどう考えていくのか。
(Photo by Natali Hordiiuk on Unsplash)
言語には、社会的側面があります。
言語の発達といっても、個人の価値観や思考の枠組み、社会状況など、
実は普段思っているよりもずっと、
様々な要因が関係しています。
・ご自身とお子さんの状況を一度見直してみたい。
・バイリンガル子育てに疲れた。
そんなときには、バイリンガル子育て・教育相談をご利用ください。
ご家族の状況や、今後の方針を見なおしたり、考え始めたりするきっかけとなるかもしれません。
バイリンガル子育てを「あきらめる」とはどういうことか
実は、「バイリンガル子育てをあきらめる」といっても、色々なことを意味します。
以前も書きましたが、「バイリンガル」は、実はかなり幅のある言葉です。
決して、常に両言語が学齢相当でなければいけない などということはないのです。
「あきらめ」なくても、前向きに変化していくことは十分、可能です。
下↓の記事でも、バイリンガルの言語発達について書いています。