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アメリカの高校の「飛び級」って?
子育てに忙しいみなさま、大変お疲れ様です。
毎年5月末~6月にかけて、アメリカは卒業シーズン。
小学校や中学校では「卒業式」が重視されていないアメリカですが、高校、大学、そして大学院
となってくると話は別。
日本とは趣が異なるものの、盛大な卒業式が行われます。
特に高校は義務教育の終了で社会人への第一歩。
家族全員だけでなく、親族まで集まって卒業生を祝福する家庭も多くあります。
大規模な高校は、全4学年の生徒数が千~2千人というのは普通ですから、卒業式も大変です。
一人一人の名前を読み上げるだけで数十分かかります。
大規模校ではほぼ間違いなく、フットボール競技場で行われます。
最近 武田久美子の娘さんがカリフォルニア州立大学サンタバーバラ校(UC Santa Barbara)を18才で卒業予定ということで、「高校も飛び級」して優秀だと話題になっていました。
アメリカの高校は確かに4年制のところが多いのですが、基本的に「単位制」なので、「飛び級」と聞くと違和感があります。
ちなみに、地元デービスでは、UC Davisを16才で卒業した才能ある若者が話題になっていましたが、ちょこっと地元メディアで報道された程度です。
アメリカの高校生は18才より前に卒業することも結構、多いのです。
でもそれは、高校を「飛び級」したということなのでしょうか。
今回は、アメリカの高校を卒業するのに必要な条件について調べてみました。
アメリカの高校卒業の基準は州が規定(例外あり)
以前からアメリカの教育は州や学区、さらに学校によってかなり異なると書いてきましたが、
やはり高校の卒業条件も、基本的には州ごとに異なります。
「基本的」にというのは、実はそれさえも統一されていませんでした。
さすがアメリカ。
47州とコロンビア特別自治区(Washington D.C.)は、州が高校卒業の最低基準を規定しています。
コロラド・マサチューセッツ・ペンシルバニアの3州では、高校卒業条件の規定は各学校に任されています。
ただし、州が提案する基準は定められているようです。
(出典:Education Commission of the States)
各高校も卒業条件を規定
この最低基準ですが、基本的には、主要科目(英語・数学・科学・社会)や選択科目で、高校4年間に最低何科目履修するかが定められています。
高校では1年間(9月~6月)の約8か月間で1科目履修すると1単位とされ、
州ごとに何単位履修で卒業できるという条件が示されるのが普通です。
例えば英語が4年間で4科目、数学4科目、科学・社会は3科目ずつ、選択科目からは〇科目…などという風に規定されます。
さらには、高校卒業試験やアメリカの憲法の基礎知識を問う試験をパスしなければならない という規定もあるところもあります。
そして、この州の定める最低基準を満たしつつ、各学校が卒業に必要な条件を規定します。
ですから、学校によって、必要最低条件で卒業できるところもあれば、そうでないところも出てくることになります。
高校は単位制ということで、
外部の教育機関で履修した学習も一定の条件を満たしていれば、〇単位まで認める、
としているところがほとんどです。
ですから、高校生が夏休みにコミュニティカレッジ(コミカレ)で履修した科目を認めたり、
さらには補習校での勉強を外国語の単位として認めてくれることもあります。
カリフォルニア州の高校の特徴:必修単位数が少ない
以下のサイトによると、多くの州は高校卒業までに20単位以上の履修が必要と定めています。
4年間の高校生活で毎年4~5科目とれば卒業できる。
なるほど、そんな感じかな、と思えます。
でも少ないところもある。
その一つはカリフォルニアで、必修単位はたったの13。
英語も3、つまり4年間毎年とらなくても卒業できそうです。
上でも触れましたが、各高校の卒業条件が異なるので、高校卒業資格を得るための道は複数存在することになります。
例えば地元のDavis Senior High Schoolでは、基本的に英語も4年間履修しなければ卒業できません。
でも、別の高校では、英語の単位が州の最低基準の3単位を満たしていれば卒業できるかもしれません。
もしそのような高校があれば、その高校を3年間で卒業し、その後はコミカレに通い、そこから4年生の大学に編入することが可能となるのです。
アメリカの高校の「飛び級」が意味すること
つまり、高校を卒業するために必要単位を取得するためには、いわゆるランキングが高い高校に通わない方が速く卒業できることもあります。
速く高校卒業に必要な単位を取得すること を「飛び級」というなら、
高校に限っては必ずしも「飛び級」イコール「優秀」とはいえない可能性もあります。
(あくまで可能性です。)
もちろん、学びのペースが並外れて速く、そのペースを保って自主的に
学習を継続できる生徒もいますし、
高校以外の教育機関などで取得した単位が認められることもありますので、
本当に飛び級のような形で高校を速く卒業する生徒もいます。
でも当然ですが高校生活で大事なことは、必修単位を履修することだけではありません。
多くの高校生はその4年間を精一杯生かして、
授業に出るほかにも課外活動をしたり、ボランティアをしたりして
高校生活を過ごし、4年生時に大学に出願して、
大学1年生から新たな場所で勉強することを望むのです。
日本でもよく知られている、アイビーリーグを初めとする アメリカの名門私大に入学するためには、
かなり優秀な高校生でも、3年間で単位を取得しただけではあまりアピールにならないと思います。
それよりも4年間かけて他の活動もした方がプラスになることが多いでしょう。
だから高校を早く卒業することだけに価値を見いだす人は多くはないと思われます。
色々な大学に出願するには、大学側が必要と考える科目も履修しなければなりません。
当然、卒業に必要な科目数を上回る単位が必要です。
アメリカの高校を卒業するには、外国語の単位さえ不要のところが多いのです。
でも、コミカレを除く多くの大学では入学希望者に対し 外国語を3年間、できれば4年間履修、あるいはそれと同等レベルの水準を求めます。
結論
ということで、アメリカの高校は単位制なので、卒業に必要な単位数を4年ではなく3年でとってしまうことは、超がつくほど優秀でなくても可能です。
でも単位を早く履修することを「飛び級」というのは
ちょっと語弊があるかもしれません。
そして実は 早く必要科目を履修すること = 優秀な高校生の証
とは限らないともいえます。
いずれにしても、このような色々な事情を全て考慮して、
自分に合った方法で進路を考えることができるのが
アメリカの高校、アメリカの教育の良さ といえるかもしれません。