最近、バイリンガル子育てについてのネット上の情報も増えているようです。
関心が高まっていることの表れだとすれば、喜ばしい限りです。
でも、そんな情報過多の時代だからこそ、注意すべき点もあります。
誰かの「失敗」や「成功」体験が、そのまま自分に当てはまるとは限らないからです。
どんなに環境が似通っていても、バイリンガル子育ての環境は人それぞれ。
まったく同じ事例はほぼ皆無でしょう。
そこで、以前に「バイリンガル子育て5か条【継承日本語】」という記事を書きましたが、ここで改めてバイリンガル子育てに一番重要な、環境づくりを考える際の指針となるポイントを提案したいと思います。
夫婦でバイリンガル子育てについての方針を決める
子どもにとって「母語」(mother tongue)とは、文字通り、母親の話す言葉です。
日本人の、日本語を第一言語とする母親の子どもの母語は、日本語でしかありえません。
もちろん、母語が後に第二言語となることはあります。
日本以外の国で子育てをする場合、日本語は当然、少数派の言語となります。
海外でバイリンガルに育てるということは、少数派言語の日本語を維持するということです。
国際カップルの場合、父親は多数派の言語、例えば英語を話し、カップル間の会話も英語になることが多いと思います。
そのような場合、特に子どもが小さいうちは、母親と子どもが過ごす時間が多い場合、日本語の発達が早くなることもあります。
それでも、父親は英語で子どもに接し、母親は日本語で接していく形でバイリンガル子育ての環境を整えることができます。
これは一人一言語の法則とも言われる、バイリンガル子育て方針の一つです。
母語の維持がうまくいき、両言語への接触が十分であれば、母語の言語能力は第二言語(英語)の発達の基礎となります。
バイリンガル子育てが「失敗」することなく、両言語が高度なバイリンガルに成長することができる土台は、幼少期の母語の発達の上にある。
これが現在、世界のバイリンガル教育の基礎となっている、Jim Cummins博士の理論「2言語共有説」の基本です。
このような言語と社会の状況を理解した上で、夫婦でバイリンガル子育てについてどうするかについて、妊娠中から話し合っておくと、余計な混乱が生じることを避けられるのではと思います。
また、これと矛盾するように聞こえるかもしれませんが、それと同時に、子どもの成長や環境の変化にともない、その方針を柔軟に変更していく姿勢も重要だと思います。
子育てでは何が起こるかわかりません。
思ったような結果にならなくても、親にとって一番重要なのは子どもを第一に考え、子どもの意思を尊重しつつ、選択肢も整えることではないでしょうか。
幼少期に、日本語が強くてもある程度、英語との接触時間も保たれていれば、英語の発達が後々問題となるケースはかなりまれです。
もちろん、夫婦間の言語が英語で、バイリンガルに育てることは目指さないという家庭も日本人には多いと思いますが、それはそれで立派な選択肢だと思います。
しかし、ある程度以上のバイリンガルに育てたいと思っている場合は、母語である日本語の維持環境をどのように整えるのか、夫婦とその周囲の人々で共通の考えを持っているかどうかが成功のカギになると思います。
バイリンガル子育てのネットワークを見つけ、参加する
さて、夫婦間や親戚などの協力も得られたとしても、子育てには「村」が必要といわれるとおり、それ以外の様々な要素の影響を受けますから子育て上の悩みは日々出てきます。
女性に社会性があるのはこのためともいわれていると思いますが、とにかく、子育て一般だけでなく、バイリンガル子育てについて、愚痴を聞いてもらったり、相談したりできるネットワークに参加することも重要です。
今では世界各地に日本語を話す親が参加できるプレイグループがあると思います。
あるいは、SNSでも様々なグループがあるようです。
また、各地の日本語プレスクールや補習校・付属の幼稚園、あるいは日本語学校なども、環境を整えるにはかなり有効です。
現在は日本に長期間里帰りしたり、日本のメディアをYouTubeで視聴したりすることが簡単にできる時代です。
それでも、子どもが親との直接の関りから学ぶことの影響力の大きさは、はかり知れません。
バイリンガル子育てについて、信頼できる情報を得る努力をする
上でも触れましたが、最近はバイリンガルの「ハーフ」タレントや、個人のウェブサイト上の情報も増えています。
子育ての日常を巧みに切り取り、笑わせてくれるブログは私も大好きです。
一個人の経験談は貴重ではありますが、個人的見解であることには注意すべきこともあると思います。
バイリンガル子育てについて疑問がある場合は、バイリンガルの専門家が書いた本を少なくとも一冊ぐらいは読んでみてほしいと思います。
それが難しい場合は、せめて、バイリンガルに詳しい専門家や先生の話を参考にしたり、バイリンガル子育てにある程度成功した家庭の事例を参考にするなどして、個人的見解をうのみにして後悔することがないよう、ご注意ください。
日本語でバイリンガル、で検索しても個人のブログなどがヒットすることが多いですが、英語で検索すれば多くの論文や、学術的裏付けのある情報をまとめたウェブサイトがヒットします。
単なるグーグルで検索結果でも、日本語と英語では情報の質・量ともにかなり差がある現状であることは分かっていてもいいのではと思います。