アメリカでバイリンガル子育て(3)補習校で週末イマ―ジョン 【継承日本語】

今回は、現在アメリカ・カリフォルニア州にあるUC DavisのMBAプログラムに在籍中のバイリンガル、鶴下あゆみさんに伺ったお話をインタビュー形式にまとめます。

鶴下さんは幼少期に日本からカリフォルニア州に移住し、中学まで補習校に通ってUC Berkeleyを卒業。その後日本での企業就職を経て現在、MBA取得を目指しています。

この記事もこちらと同様、2019年12月に「バイリンガル子育ての会」を開催した時に伺った内容のまとめです。

補習校継続の秘訣とは?

鶴下さんのバックグラウンド:

ご両親は日本人で、生後11か月のときに当時小2のお兄さんとともに日本からベイエリア(Palo Alto)に移住し、その後大学までベイエリア在住。日本で小学校教員だったお母さまが教員をしていらしたSan Joseの補習校に中学まで通い、高校からは現地校に専念。

大学はUC Berkeleyで、食品栄養学を専攻。卒業後日本のカルビーに就職し、東京で3年間勤務。その後カリフォルニア州Fairfieldのカルビー子会社に3年間勤務。現在はUC Davis のMBAプログラムに在籍中。

質問と回答

―ご両親が日本人ということですが、家庭内やきょうだい間の会話は、米国でも完全に日本語でしたか?

はい。6歳年上の兄がいて、渡米時、もちろん日本語で話していたので、その影響もあるかもしれませんが、きょうだい間も基本的に日本語でした。

ただ、二人とも米国で生活していて、だんだんと英語が話せるようになってきたので、それが嬉しくなり、家の中でも英語で話していたこともありました。

でもある時、英語が得意でない母が、「お母さんがわからない言葉で話さないで」と真剣に怒ったことがありました。「そんなにいやなんだ…」と納得して、それ以来日本語で話すようになりました。

―そのような環境だと、小さい頃は日本語が強かったと思いますが、英語はいつごろから得意になっていったと思いますか?

小学校の最初のころはESLのクラスを受けていました。

4年生の時にESLを卒業し、英語が徐々に上達。中学の時に少しずつ英語が優位になりました。

高校の時には補習校には行かず、現地校の授業に集中しました。

-1歳未満の時に英語の環境に変わって、日本語を大事にしつつ、英語も徐々に習得していったというのは、まさにバイリンガル理論の教科書のお手本になるようなパターンのように思えます。

 周囲と英語で差があっても、日本語が伸びるにつれ、英語も伸びた感じですね。

 第二言語で学習言語面でも周囲の子どもに追い付くには5~6年かかるというのもよく言われますので、まさにそのように両言語が発達していったようです。

補習校継続の秘訣

-アメリカの高校は、多くの科目が選択制ですが、どんな科目を選択していましたか。

高校では、理数系科目ではAPクラスを取っていました(Advanced Placement、高校で受けることのできる授業としては、一番レベルが高いとされる科目。年に一回行われる試験に合格すると、大学でもその大学の履修単位として認められることも多い。)

英語や社会はごく普通のクラスでした。

―APは得意分野に絞ったということですね。

 その後、大学ではどうでしたか?

大学以降、特に英語で苦労はしていません。

―アメリカでも補習校を続け、日本語の維持を続けることができた秘訣は何でしょう?

当時はやっていた「名探偵コナン」や「ポケモン」のビデオを祖父母が送ってきてくれて、それがとても楽しみでした。

また、補習校に行くのが当然という感じで、いやになったことはなかったです。補習校の終わった後、友達と愚痴りながらも宿題をして、その後遊ぶというのが習慣になっていました。

公文もやっていました。国語で(Aから始まって)Jまで(中3レベル)やった。

―なぜ日本で就職されたのですか?

ずっとベイエリアを拠点にした生活だったので、一度別の場所に住んでみようと思ったんです。

就職 

―日本の会社は大変ではありませんでしたか?

最初は戸惑うことも多かったです。

例えば、上司などから来るメールに「小生」と書いてあってもよくわからなくて。

だからよくわかっていない言葉は、自分も使えるのか調べたりしながら慣れていきました。

敬語・謙譲語も難かったです。

―そうですよね。日本で育った人でも、就職して企業に入ったときはかなりのカルチャーショックを受けますからね。謙譲語だって、最近は学生はあまり使いませんし。

-そのような社会的というか、文化面の違いはバイリンガルにとっても大きいということですね。

はい。ただ仕事をする上で、案外日本の方が、ストレートに伝えても大丈夫な面があったのはよかったです。

米国の会社にいるときの方が、改善点を指摘する時などに、相手に「全体的にはとてもよかった。ただ…」などと気遣って、前置きしないといけないことがあります。

それから日本の方が計画通りに仕事が進むことが多い気がします。それもよかったです。

ただアフターファイブに付き合わなければいけないとか、女性に求められている役割(お酒の席で注ぐなど)には慣れなかったし、あまり理解できなかったです。

また自分のアイディアで、やりたいことを実現していくのは難しいと感じました。それが現在のMBAにつながっているということになります。

―私自身も、日本企業の「お茶くみ」などの習慣には慣れなかったので、まったく同じです(笑)

大学での専攻や大学選びについて

―バイリンガルというテーマからは少し外れるかもしれませんが、大学や大学の専攻はどうやって決めたんですか?

入学時はpre-med(医科大学院進学)のつもりだったのですが、途中で栄養から健康を考えることの方に興味があることに気づいて、専攻を変えました。

専攻はあまり深く考えなくてもいいと思います。

理系だったらバイオ系、化学系、などのように大まかに決めて出願できますし、選ばなくても入れます。

―ざっくり分けるとアメリカの大学にはLiberal Arts系の大学と、Research Universityとがあって、それぞれ良さがあるようですが、Research Universityに通われてよかったですか?

Liberal Artsは小規模で、丁寧に指導してくれるというのは利点だと思います。

自分は途中で専攻を変えることもできたし、自分が行ったところでよかったですが、確かに大きな大学なので、自分の居場所を探すのに苦労する人もいるかもしれません。

―なるほど。大きな大学の方が、いろいろな専攻がそろっていそうですね。

 バイリンガル自身の視点を伺うことができ、とても興味深かったです。
 どうもありがとうございました。

 まだまだお聞きしたいこともありますので、また機会がありましたら是非お願いいたします。

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