中島恒久さんのツイート
アメリカ・カリフォルニアはベイエリア在住で、いわゆる新移民(日系一世)の中島恒久さんは、ツイッターのフォロアーも1.6万人ということで、すでにご存じの方も多いかと思います。
私もある反響を呼んだ2019年の投稿を目にし、その後フォローさせていただいてます。
この中島さんの固定ツイートが最近、以前より見つけにくくなった気がするので、ここでも紹介します。
日本語で発信されるアメリカでの仕事の事情って、優秀な人の話が多いから底辺に近いエリアの話って全然伝わってないと思うんですよね。
— Tsunehisa Nakajima (@carlostsune) May 5, 2019
で、その層で生きている人たちって情報発信しないしさ。
だから、今日はその辺を話したいと思います。
なお、9/11直後にグリーンカードの抽選に当たり、初めて渡米したという中島さんの多彩な経歴は、以下の記事にまとまってます。
厳しい環境の中の新日系移民二世を支えるまなざし
アメリカで「底辺」近くでがんばっている日系移民は
日本社会がいやで脱出した人も多く
日本語教育にも熱心でなかったりする。
アメリカでの教育も、所得に比例するところが大きい。
移民本人たちが若いうちはそれでいい。
でも厳しい環境でマイノリティとして育つ、その子どもたちは
いわゆるアイデンティティ・クライシスを経験することも多い。
じゃあ日本人として日本に帰ってやっていくかというと、考え方はアメリカ人、日本語の読み書きはできない、ではつらい。
アメリカでも、底辺近くからマイノリティとして這い上がっていくのは大変。
そんな時、日本語が読み書きまでできることは、その子にとって大きな支えとなる。
という内容です(詳しくは上の元ツイートをご参照ください)。
日英バイリンガルに育てるのは親のエゴなのか
ツイートの中で、中島さんは
日本語能力ってその子の日本人としてのアイデンティティに直結します
日本語の文章が読めるだけで本当に人生が変わる
とされています。
日本語を学ばせるのは親のエゴ、という表現を聞くこともあるのですが
子どもの財産ととらえたほうがぴったりくることもある気がします。
家族全員が「日系移民」で、しかも生活がかなり大変というケースは、日系の子どもの中でも割合的には多くはないかもしれません。
それでも、日本語を学ぶ意義については、多くの日本にゆかりのある家庭に共通する部分があると思います。
そして、「無理やり」やらせなくても日本語を話し、読み書きできるようになる例もたくさんあります。
もちろん、お勉強が大好きな子どもなんて稀ですから工夫は必要です。
その一方、ただ自然に、普通にしていれば、マイノリティ言語は消えていきます。
日本語を学ぶ環境を整えるのが大変なことももちろんありますし
日本語を学ぶ過程でいろいろな葛藤があることもありますが
葛藤のない人生なんてないのではないかなと思うのです。
この便利な時代、いろいろな工夫や知恵を共有できたら、バイリンガル子育てももっと広がるのではないかと思ったりします。
マイノリティ言語の維持とアイデンティティの発達
ちなみに、移民の子どもがマイノリティ言語の母語を維持することが英語の能力の発達、そしてさらには文化・民族的アイデンティティの発達にも重要という視点は、バイリンガル教育理論で有名なJim Cummins(ジム・カミンズ)博士をはじめ、多くの研究者に支持されています。
カミンズ先生の「二言語共有説」は、こちら↓で解説しています。
カミンズ先生の著書は、3冊が和訳されているようですが、その後も多くの著書を出版されています。
特に多文化社会におけるマイノリティの子どものアイデンティティの発達において、母語の維持がエンパワメントに非常に重要であることを説いた “Negotiating Identities: Education for Empowerment in a Diverse Society” などは、大学・大学院の授業などでも使用されることも多く、よく知られていると思います。
中島さんのツイートは、トロントでのカミンズ先生の授業でのディスカッションを思い出させられるもので、とても重要な視点だと思います。