前回は、最新版・アメリカの高校ランキングの1位に君臨するThomas Jefferson High School(通称TJ高校)が設立された時代背景や、現在直面している問題についてみてみました。
TJ高校は、やっぱりユニークな学校でした。
アメリカの高校ランキングに対する批判再び
さて、ランキングそのものの話題から、かなり脱線してしまいましたが、話を戻します。
先にも書きましたが、ランキングについて調べていた時、すぐ目に入ってきたのは、実はランキングに批判的な記事でした。
特にある記事は、最初に高校ランキングを作成・発表したジェイ・マシューズ(Jay Mathews)氏の指標の算出方法に対する批判が、これまでにも何回も出されていると指摘していました。
方法の不適切さを指摘されるのは、高校ランキングに限らず何の統計でも痛いところです。
アメリカの高校ランキングに違和感があるのは、とにかく教育(しかもアメリカでは義務教育)が学力だけでは測れない面もあるという、根本的な問題に加え、
地域によって、様々な特色があり、かなり個性豊かな学校をいくつかの切り口のみでランキングするということがそもそも無茶であるという面が関係していると思います。
このような批判にさらされているのをみると、ランキングは、いたずらに学校間の競争をあおったり、指標を改善することにばかり力を入れる学校も出てきたりするなど、やはりその弊害に注目したくなります。
最初の高校ランキング発案者の反論
ただ、このマシューズ氏が書いた反論の記事を読むと、そのような見方もまた一面的だということに気づかされました。
下の記事によると、マシューズ氏は、各高校でAPの授業を受講し、テストを受ける生徒の総数を、その年の卒業生総数で割ったものを指標として採用しました。
そしてこれを「チャレンジ・インデックス」と名付けました。
What I Learned in 23 Years Ranking America’s Most Challenging High Schools
APというのは、大学によっては単位として認めるのですが、そのためには、ただ授業を受けて、その授業を落とさないようにすればよいのではありません。
College Boardが行う、全国統一のAP試験(有料)を受けて、評価を受けなければなりません。
評価は5段階で、3以上がいわゆる合格(パス、qualified)です。
このAPテストにパスするかどうかも重要な基準であるため、APを受講する生徒数だけを利用しても、指標としては不十分であるという批判もあったようです。
でも、ちょっと考えると変です。
仮にも米国の全国紙で有名な、Washington Postに長年、掲載されたランキングです。
そんなこと、マシューズ氏だって、周囲の人々だって、わからないはずはない。
そう思わないでしょうか。
マシューズ氏の高校ランキングに込めた思い
なぜそのような算出方法になったのかというと、実はマシューズ氏には意図があったのです。
マシューズ氏がランキングを作成しようと思ったのは、そもそも、APの授業があっても、受講する生徒が少ないような、いわゆる経済的問題を抱える家庭の多い高校をなんとか評価しようとしたからなのです。
大学進学への道をあきらめないよう、生徒たちにAPに挑戦するように励ましている、熱意溢れる教員と、そのような教員に応え、がんばる生徒たちが評価される指標を採用したかったのです。
そのために、APの試験に合格した生徒の割合などはあえて、含めない指標、すなわち「挑戦」の指標でランキングを作成したわけです。
私は統計学などには詳しくないのでよくわかりませんが、その説明を聞くとなるほど、と納得します。
そして、いろいろなランキングがあるなら、本当に単なる「指標」として参考にするのは有効だろうとも思いました。