「日本語が弱い」から算数の文章題が苦手なのか?
海外でバイリンガル子育てに取り組んでいるみなさま、お疲れ様です。
補習校や家庭学習で、算数の文章題が苦手だというお子さんも多いと思いますが、
そんな時、「うちの子は日本語が弱いから」仕方がない、と考えて納得していることもあるのではないでしょうか。
つまり、バイリンガル、あるいは継承日本語児童にありがちな言葉の問題としてみているということです。
確かに算数の問題には、英語圏などに住む子どもが普段使わない語彙が含まれているものもあります。
でも本当にバイリンガルだから文章題が苦手なのかということは、私は正直、確信が持てていませんでした(疑い深い性格です)。
今回、普段から日本の学校に通っている子ども達も、文章題の読み取りが苦手だということが分かりましたので、それについて書きたいと思います。
また、最後に算数のおすすめの動画教材も紹介しています。
日本の小学生も文章題の正答率は低い!
実は、別のことを調べていた時、今井むつみ先生の「算数の文章題を解くときの子どもたちの頭の中」という文章が公開されているのに気づきました。
今井むつみ先生と言えば、20年末には「英語独習法」という本も出版され、好評だということですが、私は手にする機会もまだありません。
ただ2020年度以降の小5の国語の教科書(光村図書)に、今井むつみ先生の「言葉の意味が分かること」という文章が掲載されています。
この文章は、言葉の意味はみなが普段思っているより奥深いもので、「広がり」があるのだということを解説してくださっている説明文です。
例として、英語ではスープを「飲む」とは言わないが、日本語では「飲む」が一般的、ということなどが挙げられており、バイリンガルの子ども達には内容が理解しやすく、親しみやすいものとなっています。
そんなこともあり、今井先生の文章や研究には関心を寄せていました。
今井先生によると、小3で学習する、あまりのあるわり算の文章題を小3、小4、小5の子どもたちに解いてもらったところ、小3の正答率は4割程度。小4でも5割に満たず、小5でも53.9%だったそうです。
この問題は
「1まいの画用紙から、カードが8まい作れます。45まいのカードを作るには、画用紙は何まいいりますか。」
というもの。
45を8で割るとあまりがでますが、わり算の商である5を、そのまま答えにしてしまうと間違いとなります。
あまりが出るということは、5枚では足りないので、正解は6枚です。
日本でも、ここまで自分で考えられない子どもが約半数かそれ以上、いるということです。
問題解決力・批判的思考力・メタ認知が未熟な子どもたち
今井先生は、正答にたどり着けない子どもの思考過程を分析し「問題を解決する練習が足りていないので、知識が身体化されておらず、頭でとどまってしまっている」と指摘しています。
また、ちょっと考えて見直してみれば、正答かどうかわかるはずなのにそれをしないという「メタ認知・批判的思考の未熟さ」や、文章題について「考える」ことまで意識が及ばない子どもが多いことも示しているのではないかという分析もされています。
※詳しくは、今井先生の投稿を参照ください。
ここでバイリンガルの子どもの親や指導者は、もちろん、「日本でもそうなんだ~!」と安心すればいいというわけではないですね。
当然ながら、バイリンガルで英語が強い子どもであれば、英語のメタ認知力は大丈夫なのか、気にかける必要性が改めて、強調されるべきだなと思います。
さらには、これだけの割合の子どもが、文章を理解して答えようという意欲に欠けている、という現実の意味を、どうとらえ、考えるべきかも問われているような気がします。
例えば、算数の文章題の文脈にあまり入り込めない子どもが多いならば、文章題を算数という科目の中でだけ教えていていいのだろうか。
ドリルのように繰り返し、問題をこなすことが苦痛だという子どもが多いとすれば、どうすればいいのか。
今井先生も
なんのために算数を学ぶのか。それを子どもたちが感じられる授業が必要だ。同時に、学んだ単元の内容を「どう使うか」を学ばなければならない。そのためには学んだ内容をその単元の終わりで「もう学習が済んだ内容」にせず、実生活に結びついたさまざまな場面で繰り返し使う場面をつくることも大事である。
とまとめておられますが、ここで今井先生が提起されている問題は、教育に関わる全ての人が真剣に考えるべき問題だという気がします。
そして、今井先生が他でも強調されているポイント、幼少期からの言葉の発達が思考の発達に非常に重要、ということ、さらにはバイリンガル子育てで重要な、幼少期の母語の発達の大切さというテーマにもつながると思います。
日本語の算数解説動画
ちなみに、コロナ禍をきっかけに、算数の解説動画は分かりやすいものが広く知られるようになりました。
動画の良いところは、聞き逃しても繰り返し、視聴できることです。
ICT教材eboardや、「とある男が授業をしてみた」はおすすめです。